稀音家千鶴”華艶なる調べ”新春公演

1月も20日過ぎて仕事などをしていると、正月の気分も忘れて

しまいがちになりますが、江戸長唄三味線の稀音家千鶴師匠が東

京・恵比寿で新春公演を開催されまして、出掛けてきました。



稀音家千鶴”華艶なる調べ”新春公演



長らくこのブログをお読みくださっている諸兄様にはおなじみで

すけれども、千鶴師匠のライヴは4回目です。




今回は、前回・前々回のSTB139から変わって、ガーデンプ

レイスそばのアクトスクエアという新しい会場。スクエアという

名前に対してホールは円形です。



そこに雛壇を拵えて演奏、ホールにあるスクリーンに日本画を処

理して動画に仕立てた映像を映し出しながら曲目が進むという、

これまた新しい趣向が施されていました。



千鶴師匠は、日本古来の伝統芸能を長く後世に伝承していくため、


稽古も演奏も行政の保護を受けて内部の方だけで認められる種類

のものではなく、広く現代社会の現場に出て演奏を披露すること

によって、伝統芸能が現在の世の中での生きた立ち位置を獲得す

ることこそが、本当に生きた芸能になるという強い信念をお持ち

です。



これまで、その現代社会のなかでの生きた伝統芸能の表現方法を

模索して来られました。今回はその成果が結実した充実した内容

の素晴らしい、正にライヴとなりました。




当初、三味線とライヴという言葉は腹落ちする実感の乏しい、どこ

か流れていく風のような不思議な響きの言葉で、よい会場で洋楽

とのコラボレーションをしてみたり、洋楽の会場で邦楽器だけで

演奏してみたり、これまでは実験的要素が強かったように思いま

す。



今回のアクトスクエアという会場もライヴハウスですが、同じラ

イヴハウスという言葉でも、ロックのライヴとジャズのライヴで

は箱は違います。今回は後者の方。それが吉と出ました。




背後に屏風がなく客席とのあいだに緞帳もない会場で、邦楽器が

演奏をする。始まって数分のあいだは間を掴むのにご苦労された

ご様子でしたけれども、じきに息はぴたりとあって粋の世界に昇

華していきます。調整もなく隙もなく運んでいく演奏に、プロで

ないと出来ない仕事だろうと思いました。



正月公演ということもあって春から冬まで一年を巡る5曲と、席

の客にも分かりやすいようにと、すべて曲の歌詞を配られる細や

かな心配り。




素晴らしい音楽に触れると映像が想起され、素晴らしい画に触れ

ると音楽が流れ出すものですが、その両方が目の前に現れるとそ

こには生命が生まれるのを感じます。



千鶴師匠が公演会でもコンサートでもなく、ライヴという言葉を

使われたそのエッセンスは、そこにあったのではないかと生きる

喜びを感じる感極まる夜になりました。





感謝!